「NHKにようこそ!」の感想・レビュー!人とのコミュニケーションに悩む人におすすめ!

こちらの記事では、書籍「NHKにようこそ! 」を紹介しています!

大学を中退、引きこもりした経験がある滝本竜彦による著作です。NHKは、某放送局を連想させますが、そうではありません。「日本ひきこもり協会」の略です。

周囲の方とのコミュニケーションに悩まれている方はぜひ読んで頂きたい作品です。

以下、読んだレビューを書いています。ぜひご覧ください!

おすすめの書籍: NHKにようこそ!

NHKにようこそ!」は2002年の1月31日に、角川書店から発行されている青春文学です。

もともとはBoiled Eggs Onlineに2001年1月29日から4月16日にかけて連載された作品を、大幅に加筆・訂正して単行本化しました。

著者の滝本竜彦は1978年生まれの北海道出身で、高校卒業後に専修大学の文学部へと進学するために上京します。

生活環境の変化と元来の内向的な性格が災いしてか、次第に講義に出席しなくなり無為な日々を送る毎日です。

大学を中退してからしばらくの間は就職活動に取り組むこともなく、アルバイトを始めることもありません。

ふとした気まぐれから部屋の中にあったノートパソコンを使って、コンテスト出品用の小説の執筆に取り掛かりました。

完成した「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」で、第5回角川学園小説大賞に応募すると特別賞を獲得します。

NHK青春アドベンチャーによって2002年からはラジオドラマ化、2007年の12月からは佐伯惇一によるコミック化。

更には北村拓司監督による実写映画が2008年1月19日から劇場公開されるなど、メディアミックス作品も豊富です。

ボイルドエッグズ社と小説家としてエージェント契約を締結した後で、長篇小説第2弾として本作品を書き下ろしました。

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NHKにようこそ!

NHKにようこそ!のレビュー①読んだきっかけ

大学中退後に古ぼけたアパートの6畳1間の自室に閉じ籠っている、異色の主人公・佐藤達広に興味を抱きました。

遠方に住んでいる両親たちには「資格の勉強をしている」などと騙して仕送りを受けているのが不甲斐ないです。

外出は週に1度で近所のコンビニに食料とタバコを買い出しに行く時だけで、彼女は愚か親しい友だちもいません。

22歳にして無職で1日16時間眠り、昼夜逆転の暮らしを送りながら「日本ひきこもり協会」ことNHKへ戦いを挑んでいく姿に笑わされます。

自らを「ひきこもり世代のトップランナー」と位置付けている、滝本竜彦の持ち味が存分に発揮されている1冊です。

著者と同世代の本谷有希子が2006年7月に新潮社から刊行した、「生きてるだけで、愛」にも繋がるものがありました。

こちらの芥川賞候補作は合コンで知り合った年上男性のマンションに居候する、25歳の無職女性がヒロインになっています。

過眠症と言い訳をして1日17時間以上も眠り続けて、仕事も家事もしない板垣寧子の駄目っぷりは本書の佐藤にも負けてはいません。

劇作家として活躍しているアクティブなイメージが強いため本谷作品よりも、実体験を赤裸々に綴った滝本版の方に心惹かれたのがきっかけです。

いま現在ではハードカバーバージョンは絶版となっているために、2019年1月9日に通販サイトで文庫版を購入しました。

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NHKにようこそ!のレビュー②お気に入りポイント・満足な点

決まりきった毎日と迫りくる漠然とした不安を撃ち破るために、僅かながらも前に進んでいく姿に勇気を貰えます。

佐藤が間借りしているのはかつて通っていた大学から程近い、三田ハウスという名前の単身者向けアパートの201号室です。

4月を迎えて隣室の学生たちは就職先が決まって旅立っていき、ひとりだけ置いてけぼりを喰らってしまいました。

そんな冴えない佐藤を外の世界へと連れ出そうとすべく、お節介な訪問客が次から次へと押し寄せてくる展開を楽しめます。

母親が怪しげな新興宗教にはまっている中原岬、佐藤の高校時代の後輩に当たり専門学校に通いながらクリエイターを目指す山崎。風変わりな珍客たちの来訪に迷惑そうにしながらも、チャイムが鳴った途端に佐藤は玄関の扉を開けてしまいます。

誰かがやって来て外の世界と部屋の中とを隔てている、ドアを開放するきっかけを密かに待っていたのでしょう。

心の扉を開いていくかのように周りの人たちと触れ合って、自分自身の過去と向き合っていく場面が印象深かったです。

個性豊かな登場キャラクターたちとの別れを経験して、自分だけの「NHK」を立ち上げてしまうラストは感動的でした。

他者とのコミュニケーション能力に不安を抱いている皆さんや、新しい何かにチャレンジしてみたい方は是非読んで下さい。

NHKにようこそ!のレビュー③不満だった点

物足りない点を敢えてあげるとすれば、ストーリー後半のメイン舞台となる北陸地方の田舎町についてでしょうか。

マンガ喫茶やコンビニが建ち並んでいる、無機質で匿名性の高い都会の街並みとのコントラストは効果的でした。

町の名前こそはっきりとは指摘されてはいないものの、日本海に面している断崖絶壁の名勝地も思い浮かんできます。

一方ではヒロインの中原岬を巡る家族との関係性や、幼少期にまで遡る不遇な境遇はそれほど必要性を感じません。

やはり主人公の佐藤の生い立ちから、生まれ育った故郷への愛憎半ばする気持ちをとことん掘り下げていくべきです。

檜山郡上ノ国町のような、著者と縁の深い北海道の小さな町を舞台に選んでみても面白かったかもしれません。

佐藤が長らく続いていた怠惰な生活を脱出する契機となった、終盤でのドラマチックな訣別の時は見応えがありました。

その余韻にじっくりと浸る暇もなく、名残惜しさをぶち壊してしまうようなあっさりとした岬との再会シーンも余計です。

深い孤独感を乗り越えて岬への未練をすっぱりと断ち切った後の、佐藤の一回り成長した姿を見てみたかった気もします。

分かりやすいハッピーエンドにこだわることなく、読む人に任せた突き放したような結末こそこの物語には相応しいです。

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NHKにようこそ!

まとめ

購入したきっかけ・理由や実際に使用した感想についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

見てきた通り、特徴は以下の通りです。

  • 引きこもり経験者の著者がつづった、コミカルな小説!
  • 周囲の方とのコミュニケーションに悩んでいるひとのおすすめ!

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