おすすめの本「奪われた家/天国の扉 」の感想・レビュー!

こちらの記事では、おすすめの書籍「奪われた家/天国の扉 」を紹介しています!

奪われた家/天国の扉 」面白そうですよね。ただ読む前に他の人が読んだ感想を確認しておいた方が良いでしょう。

この記事では、「奪われた家/天国の扉 」を実際に読んだレビューを載せています。ぜひご覧ください!

おすすめの書籍: 奪われた家/天国の扉

「奪われた家/天国の扉」は、2006年の6月8日に光文社から刊行されています。著者のフリオ・コルタサルは大使館に勤務していた父親の赴任先、ベルギーの首都・ブリュッセルで1914年に生まれました。

アルゼンチンに帰国後は地方都市で教員生活を送るようになりましたが、軍事政権の台頭とともに失業してしまいなかなか再就職先が見つかりません。

地元紙や雑誌に掲載するために10数作の短編小説を書き溜める中で、ようやくアルゼンチン書籍協会の理事の職に就いたのは1946年のことです。

文芸雑誌「ブエノスアイレス年報」に連載された「奪われた家」から、書き下ろしの「動物寓意集」まで8編を収録した本作品で1951年の半ばに小説家デビューを果たしました。

名門スダメリカーナ社から出版されましたが、アルゼンチン本国では一向に売り上げが伸びることもなく批評家に取り上げられることもありません。

日本でも長らく未翻訳のままで埋もれていましたが、ラテンアメリカ文学の研究者にしていち早く日本にコルタサル作品の魅力を伝えた寺尾隆吉が翻訳に漕ぎつけています。70年間の生涯で10冊以上の短編集を発表した、20世紀の南米を代表する個性派作家の記念すべき処女短編集です。

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おすすめの 奪われた家/天国の扉 のレビュー①読んだきっかけ

「マジックリアリズム」と名付けられて1940年代の前半にヨーロッパから南アメリカ大陸へと持ち込まれた、現実の世界と虚構が入り混じった独特な語り口には前々から興味を抱いていました。

慌ただしく流れていく無味乾燥な日々や無機質なオフィスでのルーティンワークに疲れた時に、ほっとひと息入れて手に取ってみたくなります。

アルゼンチン幻想文学をリードした20世紀の作家と聞いて真っ先に思い浮かべたのは、ホルヘ・ルイス・ボルヘスです。

ボルヘスの出生作で宇宙空間のように無限に広がるダイナミックな図書館を舞台にした作品集、「バベルの図書館」は読書家や絶版本のコレクターには堪りません。生涯を自国に止まり続けて創作活動に没頭したボルヘスの作品よりも、パリへの留学経験や中南米の小国・ニカラグアの革命にも参戦したコルタサルの方に心惹かれたのが決め手になりました。

駅ビルのフロアの中に店を構える大型書店の海外文学紹介コーナーで見つけて、すぐさまに購入したのが2019年の10月26日です。

グラフィックデザイナーの望月通陽によって装丁されたブックカバーもピンクと白のシュールなデザインで、物語の世界観を演出する効果はバッチリで満足しています。

おすすめする 奪われた家/天国の扉 のレビュー②お気に入りポイント・満足な点

アルゼンチンの郊外ロドリゲス・ペーニャ通りに立地する広大な敷地のお屋敷で、静かな暮らしを送っている兄妹を主人公にした「奪われた家」から本短編集は幕を開けていきます。

正体不明の侵入に脅かされながらも怒ることもなく戦うこともなく、読書を楽しむ兄と編み物に興じる妹の姿が印象深かったです。

運転手や乗客による理不尽な暴力に若いカップルが立ち向かっていく「バス」には、第二次世界大戦終結後に権力を掌握したファン・ドミンゴ・ペロン大佐を彷彿とさせるものがありました。

ペロン大佐の妻も独裁者と慈善家のふたつの顔を合わせもった不思議な女性で、マドンナ主演の映画「エビータ」でご存知の方も多いのではないでしょうか。

「偏頭痛」や「キルケ」といった自伝的要素が込められた短編も盛りだくさんで、何者でもなかったひとりの若者のモラトリアム感には共感できます。

副題に「動物寓意集」と銘打たれた通りに、随所に擬人化された鳥や獣が登場して重要な役割りを果たしているのも特徴的です。

「パリへ発った婦人宛ての手紙」に出てくるウサギのような可愛らしいものから、想像上の生き物・マンクスピアまで。背景の片隅や本筋とは関係ない思わぬところに潜んでいますので、1匹残らず発見してあげて下さい。

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奪われた家/天国の扉 のレビュー③不満だった点

物足りない点を指摘するならば、ラテンアメリカ作家のアンソロジーで既に邦訳がある短編が多いことでしょうか。

ペルーの鬼才マリオ・バルガス・リョサが2010年にノーベル文学賞に輝いた際には特集号が組まれたために、本書に収められている「遥かな女ーアリーナ・レエスの日記」もあちこちの専門誌で取り上げられました。

コロンビア出身のガブリエル・ガルシア・マルケスが2014年にこの世を去った時にも、メモリアル企画として「天国の扉」の新訳が発表されています。

「奪われた家」や「キルケ」なども翻訳者や原本が異なった複数のバージョンが存在するために、どれを決定版とするのかが悩ましいところです。

その時々のブームによって都合よくスポットライトが当てられているために、翻訳物に造詣が深い方やスペイン語が堪能な皆さんからするとそれほど新鮮味は感じないのかもしれません。

これまでは余り世に知られていなかった名作や、貴重な未発表原稿を付録として載せてもらえると嬉しかったです。

くじに当選した見知らぬ男女が豪華客船に招かれて行き先も知らされることなく出航する不条理文学の最高峰「Los Premios」も、完成から半世紀たった今でも日本語では読むことが出来ません。是非ともこの機会にフリオ・コルタサル全集を発売して欲しいと思います。

まとめ

購入したきっかけ・理由や実際に使用した感想についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

ぜひこちらの感想も踏まえて読んで見ることを検討して見て下さい!

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