Amazonでおすすめの本「水の時計」の感想!

こちらの記事では、おすすめの書籍「水の時計」を紹介しています!

水の時計」面白そうですよね。ただ読む前に他の人が読んだ感想を確認しておいた方が良いでしょう。

この記事では、「水の時計」を実際に読んだレビューを載せています。ぜひご覧ください!

Amazonでおすすめの書籍: 水の時計

書籍のタイトルは『水の時計』で、著者は初野晴さんです。初野晴さんは『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』などのハルチカシリーズで有名になりました。

作風はファンタジーの世界観とミステリーの論理的なトリックが融合した、ちょっと不思議な物語という表現が妥当な作品が多いです。

『水の時計』は初野さんのデビュー作で、2002年に第22回横溝正史ミステリ大賞を受賞しました。

この作品は、端的に言えば現代版の『幸福な王子』と言えます。

『幸福な王子』とはオスカー・ワイルドの作品で、町の中央に建てられた王子像が、仲良しのツバメが語る町の人々の困窮する様子を聞き、心苦しく思った王子像が自らの装飾品である宝石や金箔をツバメに届けさせ、最後には装飾がなくなってみすぼらしくなった王子と寒さで死んでしまうツバメが描かれます。

『水の時計』における主人公はツバメ役である暴走族・高村昴で、王子像役は、脳死と判定されながら、機械によって意思疎通をすることのできる令嬢・葉月です。

昴は作戦に失敗したところを葉月の付き人である芥という執事に助けられ、葉月の願いを叶える手助けをするように頼まれます。

その葉月の願いとは自らの臓器全てをそれぞれ必要としている人々に届けてほしい、というものでした。

昴は困惑しつつも。警察の追跡を逃れる技術を用いながら、臓器の「配達」をこなしていきます。その過程の中で、昴の苦悩や葉月の願いの理由が明らかになっていきます。

Amazonでおすすめの 水の時計 レビュー①読んだきっかけ

『水の時計』を買ったのは高校2年生の頃でした。

中学3年生から本格的に本を読み始め、高校生になってからは高校の図書室に入り浸っていました。

自分で買うことはほとんどありませんでしたが、たまに本屋に立ち寄ることは楽しみの一つでした。

その時は近所の宮脇書店で、何時間も悩んだ挙句、やっと買った一冊でした。当時はお小遣いがほとんどなく、文庫本とはいえ、買うのに勇気が必要でした。

買った理由としては、その内容が自分にとっては今までになく刺激的で興味深かったからです。

脳死でありながら話すことができる、しかも自分の臓器を人々に分け与えてほしいというのです。

そのあらすじが頭から離れず、最後には買う決断をしました。なぜ彼女は意思がありながら、じっくりと自殺するようなことをするのか、それを手伝う主人公は何を思うのかを知ることは今後の人生においてもどこかで生きるのではないかと感じたのも一つの理由です。

また、当時の図書室に『水の時計』はなく、初野晴という作家も知らなかったため、どんな作風かも知らないという状態はとても興味を掻き立てられました。

その上、シリーズモノのように何冊もあるわけではなく、一冊で完結だったため、経済的にもありがたかったです。

Amazonでおすすめする 水の時計 のレビュー②お気に入りポイント・満足な点

私が『水の時計』で気に入っているポイントは、3つあります。

1つ目は、寓話を元にして作っている点です。

古典ともいえる作品が臓器移植ドナーという現代の話に置き換えられることでこんなに深いところにまで掘り下げられるのかと思い、小説の可能性にワクワクしました。

読むと、他の作品を現代版にしたら、と考えるきっかけにもなるので、若い時に物語を創作したいと考える人には何らかのヒントをくれる作品ではないかと思います。

2つ目は、昴と葉月の物語だけでなく、臓器が届けられる人々のストーリーにも光が当てられている点です。

彼らは昴と会話をするのですが、そこで初めは荒々しいイメージの昴の優しい部分などが見えてきます。

『幸運の王子』のツバメは宝石を運ぶときは唯の運び屋でしかありませんが、昴は人間です。

もしツバメが人間ならばどれだけ苦悩するのだろう、という予想がつきますが、本作においてはその心象を細かく描写することがしません。

しかし、言動や様子から心象を垣間見ることはできます。例えば、昴は臓器の受け渡しをする中で様々な人々に出会い、葉月と会話して、次第に髪が白くなっており、相当なストレスがかかっていることがうかがえます。

また、最後に元々昴に関わりのある者の元に臓器を運ぶことになるのですが、彼の話から昴の元の性格をうかがうことや、葉月が脳死になった原因なども明らかにされていきます。

3つ目に、ラストの描写が何とも言えない仕上がりとなっている点です。『幸運の王子』のストーリーは哀愁の漂うものとなっていますが、『水の時計』のラストは少しの希望を残すものとなります。

これをハッピーエンドと呼ぶには苦いものがありますが、初野晴さんの作風を知るには十分なインパクトがあります。ぜひハルチカシリーズが好きな人にも読んでほしい一冊です。

Amazonで 水の時計 のレビュー③不満だった点

本作で不満があるとすれば、葉月が本当の意味で死んでしまうシーンです。

昴と話しているうちに、思った以上にあっさりと逝ってしまいました。昴とは最後まで話せていましたが、まさかあんなにすぐ死んでしまうとは思っておらず、死んだ後の描写もあっさりしていて虚しさを感じざるを得ませんでした。

それでも寓話を元にした話であると考えるなら問題もないのですが、葉月や昴の今後が気になる者としては足りないものがあります。

できるならば葉月はいつか死ぬとしてもそのシーンを見たくはなかったです。その方があっさり死ぬよりは悪い後味はならなかったと思います。

しかし、これ以上葉月に苦しんでほしくないという願いを考えれば、そのシーンが無くては昴と葉月の関係を終わらせることができなかったのではないかとも思います。

もう一つ不満があるとすれば、なぜ最後、昴の彼女のような存在である加奈が現れたのかという点です。

大きく気にする点でもありませんが、そもそも加奈という存在がそれほど目立っておらず、昴とのつながりも明確には見えませんでした。

寓話においては存在しない人物であるため、加奈という存在は初野さんの描いた『幸福の王子』においてはそれなりに重要だったのではないかと思います。

加奈という存在が昴にとってどのような存在か、簡単な説明はありますが、もっと昴と加奈のエピソードが欲しかったです。

どこかの短編でサイドストーリーとして語られないかなと淡い期待をしています。

まとめ

購入したきっかけ・理由や実際に使用した感想についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

ぜひこちらの感想も踏まえて読んで見ることを検討して見て下さい!